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主に小説中心のブログ。 更新は管理人の気まぐれで不定期。 青い鳥文庫や金の星社の本を好む。
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第4話 「逃げても良いですか?」

いまだに震える足。
今さら、やっぱり休めばよかったと思う。

でもこの時間なら、まだ時雨はいないはず。
―――ああ、いっそ私以外全員休んで学級閉鎖にならないかな。

そうこう思ってるうちに、学校についた。
足が止まる。

でも無理矢理足を進ませ、教室に入った。
幸い、靴箱には何もされてないようだった。

私は、机に教科書を入れる。
いつもならスッと入るはずなのに、
今日は奥の方でカサッという音がした。

テストやプリントは入れてないはず。
不思議に思い、教科書をいったんだして、机の奥に手をつっこんでみた。
確かに、紙がある。
クシャクシャな紙。多分、さっき無理矢理教科書を入れたせい。

丁寧にしわをのばして、紙に書かれた文字を読む。




    楽 し い 一 日 の 幕 開 け ね





「ひっ・・・・・・!」

おもわず、後ろの席の机をガタン、とゆらしてしまった。
・・・この字、この言葉・・・!
絶対、時雨だ・・・。

やっぱり、来るんじゃなかったっ・・・

そう思って、急いで教室を出ようとした。
でもその時、私の前に立ちはだかったものがあった。

「何処行くのぉ・・・?せっかく、楽しい一日が始まるのにぃ・・・」

不気味な笑みをうかべて言った。
それはまぎれもなく、時雨だった。

「いやぁ・・・・・・・・・っ!」

違う方のドアから、私は急いで逃げようとした。
後ろで時雨の気配がして、怖い。

「ねえ、待ってよぉ・・・。私の楽しみ奪わないでぇ・・・?」

にやにやと笑いながら、時雨が歩いてついてくる。
私は必死で逃げる。

「ねぇ・・・?雛瀬ぇ・・・」

・・・・・・・え

「え・・・・・?」

その言葉で、私は止まり、時雨の方を向いた。

「何で・・・その名前・・・」

ふるふると震えながら、私は話す。
”雛瀬”と名乗って、椿と会っていたあのチャットには、
椿と私以外誰もいなかったはず。

なのに、どうして・・・?

「・・・ふふ、考えれば分かることでしょぉ・・・?」

私の頭の中によぎった、最悪の答え。

「椿は、あたしなの」

「え・・・・・・・」


今まで、私の現実を知らないと思っていた椿。
だからこそ、私に勇気を与えてくれる、大きな支えとなってくれると思っていた。
その椿が、私の前にいる時雨だったなんて。

「う・・・嘘・・・でしょ・・・?だって、性格も全然・・・」

「性格なんて、いくらでも変えれるわ。この手で打った文字が、
 ネットの中では全てなんだから」

にやりと笑う、時雨。
そして、私に近づいてきた。

「あたしさぁ・・・、朱鷺の情報、いっぱい持ってんだよねぇ・・・。
 これ、ネットでばらまいたらどうなるかなぁ・・・?」

つまり、個人情報をネットでばらまく、ということだった。
私の顔写真、メールアドレス、住所、電話番号、名前。
それをばらまけば、世界中の人が私の情報を悪用したっておかしくない。

ネットは、そういうもんなんだ。

「嫌・・・やめて・・・!そんなことしたら・・・」

「朱鷺、どうなっちゃうかなぁ・・・?人身売買でもされて、売られちゃうのかなぁ?
 それとも脅されて、お金とられちゃったり?てゆーか第一に、家族にめっちゃ迷惑かけちゃうよねぇ・・・」

軽軽しく、恐ろしいことを言う時雨。
そして最後に、とどめをさすように言った。

「でもそういうの全部、あたしには関係ないけどねぇ」

・・・ああ、こういう人なんだ、時雨は。
今までの時雨は、偽物だったんだ・・・。

「あ」

時雨の声とともに、階段の方からガヤガヤとみんなが来る気配がした。
ぶくっと、私は体を振るわせる。
時雨が一声かければ、私は全校生徒からいじめられてもおかしくないと思う。

「存分に、楽しませてもらうからねぇ・・・」

耳元でささやき、時雨はみんなの方へ行ってしまった。





もしものときの、ネットへの逃げ道も無くなってしまった。

それでもどこかに、まだ私の逃げ場所があるのなら



私、逃げても良いですか―――――?
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第3話 「何をしたんだろう」

 ――――”明日が楽しみね”――――

その言葉で、眠れなかった。
だけど、”明日”は私の心も知らずにやってくる。

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

こみあげてくる怖さに、私は震えていた。
あと何歩か歩いたところに、時雨はいる。

何をされるか分からない
無視?暴力?暴言―――?

どれにしろ、昨日とは違う今日なんだ。

・・・怖くない、怖くない・・・!

休めば、休めばいい話じゃない。
あいつらだって、家までは来ないはず・・・!
それに学校に行ったって、紗稀を除いて椎名も真耶もいる。

ほら、怖くない。怖くないじゃん・・・!

私は勇気をふりしぼって立ち上がると、
いつもどおりをよそおって、一階に下りた。

何も知らない親。
事実をしれば、どうなるんだろう。
もう・・・普通の幸せな生活には戻れないのかな――――・・・。

お母さんが私に気づいてふりむく。
私は顔をパシパシと叩いて、普段の顔に戻した。

「あらおはよう。」

「・・・おはよう」

机にあったパンとココアをとると、顔も見ずに2階へ上がった。
・・・これ以上あそこにいると、また震えだしてしまいそうだから。

パンとココアをパソコン台に置くと、私は電源をおした。

・・・そうだよ。
私には、椿もいるじゃん。

元気、つけとかなきゃ。

私はいつものチャットに入る。

 ――――雛瀬さんが入室しました――――

椿:こん(12/28-06:42:13)

雛瀬:こん(12/28-06:42:25)


この現実で、私の居場所がなくなったって、
私にはパソコンがある。チャットがある。椿がいる。

私はまだ、生きている。


椿:あのさー(12/28-06:42:43)

雛瀬:ん(12/28-06:42:57)

椿:雛瀬って何処住み?(12/28-06:43:12)

雛瀬:とりあえず日本だよー。(12/28-06:43:25)


何かつっこんでくるかと思った。
でも椿の反応は、薄かった。


椿:ふーん・・・(12/28-06:43:44)

雛瀬:反応薄いな。何か言ってくると思ったのに。あ(12/28-06:44:24)

椿:ん(12/28-06:44:36)

雛瀬:落ち!ココア冷めるーっ(12/28-06:44:45)

椿:キーボードにぶっかけんなよー。じゃね ノシ(12/28-06:45:04)

雛瀬:ノシ!(12/287-06:45:16)
 
 ――――雛瀬さんが退室しました――――


そして私はゆっくりとココアを飲み干すと、
ブラウザを閉じた。

些細な会話で、少しだけ勇気を貰った気がした―――。


7時30分。

私は鏡の前で制服を正すと、
ゆっくりとドアノブをまわした。

光が部屋に差し込む。



さあ、行こう。
第2話 「昨日の笑顔は消えて」

ちょっとした変化があった。

あの、誰とも親しい時雨を

嫌う人が、現れたんだ。

・・・ま、元から私は時雨を少し嫌っていたんだけど。
私達は悪口になれていないせいか、
それからの椎名、真耶、紗稀、そして私の中の雰囲気は悪くなってしまった。

その雰囲気をよくするどころか、悪くしてしまうんじゃないかと怖れ、
結局そのまま、一日は過ぎてしまった。

「朱ー鷺!」

いつもの明るい声がした。

―――時雨だ。

少し、私の顔がこわばったのが分かる。
理由は勿論、 時雨の悪口を言ったことがばれたら、怖かったから、だ。

「何・・・?」

いつもより、声のトーンが低い。
いつもよりまして、暗いイメージの声だった。

「昨日、すっごくオシャレで美味しそうなお店見つけたんだ。今から一緒に行かない?」

「え・・・私?」

「うん。朱鷺が好きそうなお菓子がいっぱいあったから」

私は脳をフル回転させて考える。
この誘いを断る、理由を。

・・・駄目だ。思いつかない。
再認識する。私は嘘が下手だ。

「・・・うん、いいよ」

それからは、普通に教室を出て、普通に学校を出た。
そして・・・冬だからだろう。早くも暗くなった今まで知らない道を、時雨と歩いた。

「あ」

パチン、と携帯を開ける時雨。
電話がかかってきたようだ。

「ごめん、電話だ。此処で待っててくれる?」

そう言って、時雨は少し遠くの方へ行って、電話の相手と話し始めた。

私はすぐそばにあった建物の壁に、立ったままもたれかかる。
何だか、すごい距離を歩いた感じがした。

「ワンッ」

すぐそばで、犬の鳴き声がした。
おもわずふりむく。

――――その瞬間、私は誰かに首を少ししめられるようにして、
捕まってしまった。

「きゃ・・・・・・」

叫ぼうとしたとき、その言葉はふさがれた。

「声出したら・・・」

そう言って、その人はカッターナイフを私の頬に近づけた。
恐怖が私を襲う。

「・・・ずっと、おとなしいあたしの幼馴染みでいればよかったのに・・・」

幼馴染み・・・?

ってことは、今後ろにいるのは時雨・・・?

「紗稀から聞いたよ。・・・あんた、陰であたしの悪口言ったんだってね」

・・・紗稀!?

「嘘つかないで・・・!紗稀はそんなことしない!」

そう言った瞬間、私の頬は少し切りつけられた。

「痛・・・・・・・っ」

「・・・声出すなって言ったでしょ? どうせ言ったことには変わりないんだから、紗稀は関係ないし」


「・・・・・・・・っ」

時雨の言うとおりだった。

「明日が楽しみね」

時雨はそう言うと、私を置いて行ってしまった。




”明日が楽しみね”

私にとって、悪魔がささやいたような言葉だった。




昨日の笑顔が嘘のように、私の前から消えた―――――。
第1話 「明と暗」

―――朝。

まだ薄暗い中、私はぼやける目をこすりながら、
パソコンのスイッチを入れる。

ウイーンという機械の音。

それからChat Room1、という文字をクリックして、
チャットルームに入った。


――――雛瀬さんが入室しました――――


本名とは全く違う名前で入室した。
カチャカチャと文字を打つ。
ずっとやっているせいか、今ではもうブラインドタッチだ。

雛瀬:こん(12/26-06:31:24)

チャットではお決まりの挨拶。
たいていの場合、これで返事をしてくれる。

椿:こん、>雛瀬(12/26-06:31:38)


ほらね、返してくれた。

椿は数ヶ月前に友達になった、チャットでの友達。
今ではこうして、朝に会うことになっている。


雛瀬:なんかさ、この時間来てるのってあたしたちだけだよね(12/26-06:31:50)

椿:そりゃそうでしょ。今6時だしね(12/26-06:32:15)

雛瀬:そっか。あー、眠い。(12/26-06:32:30)

椿:寝れば?まだ時間あるっしょ(12/26-06:32:45)

雛瀬:うん、そうする。ってことで落ちー(12/26-06:32:58)


――――雛瀬さんが退室しました――――

私は椿の言われたとおり、パソコンを消すと
ベットにもぐりこんで眠った。

そしてまた、30分後の7時にもぞもぞと起き出すと、
朝ご飯を食べて着替えて、学校に行く準備をした。

「じゃ、行ってきまーす。」

「行ってらっしゃい。」

顔も見ずに挨拶を交わすと、
私は家を出た。

「あ」

「おはよ、朱鷺」

家を出てすぐいたのは、幼馴染みの時雨(しぐれ)(女)。

「待ってた?」

「うん、まーね」

幼馴染みだといっても、特に仲良しのわけでもなく、
たいした会話もなかった。
元々私は、あんまりしゃべる方じゃない。
いわゆる、おとなしい方なんだ。

それに対して、時雨は世渡り上手。
先輩達にも睨まれてない。むしろ可愛がられてるし、
女子は勿論、男子にも限りなく友達もたくさんいた。
明るくてそれなりに可愛くて、みんなからの信頼もあって。
私から見る限り、最高の人生だと思う。
きっと、それはこれからも。


さほど会話も無く、私達は教室についた。
教室につくやいなや、女子数人が私達のもとに駆け寄ってくる。
いや、時雨に。

「おっはよー、時雨!――と、朱鷺。」

・・・それなりにつっこみたいところもあったが、
私は微笑んで言葉を返した。

「・・・おはよ」

「おはようみんな!ねーね、昨日のテレビ見たー?」

「見た見たっ!かっこよかったよねーっ!」


時雨の一声によって、私の声はかきけされたようになる。
それは少し、不満だった。

私は自分の席に行くと、カバンを下ろす。
それとともに、友達の真耶(まや)、椎名(しいな)、紗稀(さき)の3人が来た。

「朱鷺・・・ねえ、何かうざくない?」

真耶が言った。

「誰が?」

キョトンとして私が聞く。
すると、ものすごい小声で椎名が言った。

「時雨だよ」

「え」

正直、びっくりした。
いままで、時雨を嫌う人なんて見たことがなかったから。

「何か、女王様みたいだもん」

怒り気味で椎名が言う。
それには少し、同感だった。

「・・・ちょっと、同感かも」

苦笑しながら言うと、
・・・かすかに紗稀が、笑った気がした。



―――――まさか、

この小さな出来事が

私の心を大きく傷つけることになるなんて


この時はまだ、知るはずもなかった――――――。
第1話 「明と暗」

―――朝。

まだ薄暗い中、私はぼやける目をこすりながら、
パソコンのスイッチを入れる。

ウイーンという機械の音。

それからChat Room1、という文字をクリックして、
チャットルームに入った。


――――雛瀬さんが入室しました――――


本名とは全く違う名前で入室した。
カチャカチャと文字を打つ。
ずっとやっているせいか、今ではもうブラインドタッチだ。

雛瀬:こん(12/26-06:31:24)

チャットではお決まりの挨拶。
たいていの場合、これで返事をしてくれる。

椿:こん、>雛瀬(12/26-06:31:38)


ほらね、返してくれた。

椿は数ヶ月前に友達になった、チャットでの友達。
今ではこうして、朝に会うことになっている。


雛瀬:なんかさ、この時間来てるのってあたしたちだけだよね(12/26-06:31:50)

椿:そりゃそうでしょ。今6時だしね(12/26-06:32:15)

雛瀬:そっか。あー、眠い。(12/26-06:32:30)

椿:寝れば?まだ時間あるっしょ(12/26-06:32:45)

雛瀬:うん、そうする。ってことで落ちー(12/26-06:32:58)


――――雛瀬さんが退室しました――――

私は椿の言われたとおり、パソコンを消すと
ベットにもぐりこんで眠った。

そしてまた、30分後の7時にもぞもぞと起き出すと、
朝ご飯を食べて着替えて、学校に行く準備をした。

「じゃ、行ってきまーす。」

「行ってらっしゃい。」

顔も見ずに挨拶を交わすと、
私は家を出た。

「あ」

「おはよ、朱鷺」

家を出てすぐいたのは、幼馴染みの時雨(しぐれ)(女)。

「待ってた?」

「うん、まーね」

幼馴染みだといっても、特に仲良しのわけでもなく、
たいした会話もなかった。
元々私は、あんまりしゃべる方じゃない。
いわゆる、おとなしい方なんだ。

それに対して、時雨は世渡り上手。
先輩達にも睨まれてない。むしろ可愛がられてるし、
女子は勿論、男子にも限りなく友達もたくさんいた。
明るくてそれなりに可愛くて、みんなからの信頼もあって。
私から見る限り、最高の人生だと思う。
きっと、それはこれからも。


さほど会話も無く、私達は教室についた。
教室につくやいなや、女子数人が私達のもとに駆け寄ってくる。
いや、時雨に。

「おっはよー、時雨!――と、朱鷺。」

・・・それなりにつっこみたいところもあったが、
私は微笑んで言葉を返した。

「・・・おはよ」

「おはようみんな!ねーね、昨日のテレビ見たー?」

「見た見たっ!かっこよかったよねーっ!」


時雨の一声によって、私の声はかきけされたようになる。
それは少し、不満だった。

私は自分の席に行くと、カバンを下ろす。
それとともに、友達の真耶(まや)、椎名(しいな)、紗稀(さき)の3人が来た。

「朱鷺・・・ねえ、何かうざくない?」

真耶が言った。

「誰が?」

キョトンとして私が聞く。
すると、ものすごい小声で椎名が言った。

「時雨だよ」

「え」

正直、びっくりした。
いままで、時雨を嫌う人なんて見たことがなかったから。

「何か、女王様みたいだもん」

怒り気味で椎名が言う。
それには少し、同感だった。

「・・・ちょっと、同感かも」

苦笑しながら言うと、
・・・かすかに紗稀が、笑った気がした。



―――――まさか、

この小さな出来事が

私の心を大きく傷つけることになるなんて


この時はまだ、知るはずもなかった――――――。
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