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主に小説中心のブログ。 更新は管理人の気まぐれで不定期。 青い鳥文庫や金の星社の本を好む。
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第6話「手を組む」

「・・・勘がいいんだね」

日向はそう言って、壁によたれかかった。

「そうだよ。その能力を見るためだけに、君をよんだわけじゃない。・・・どう、鈴城さん?僕と手を組んでみない?」

そう言って、にやりと笑った。

「手を組む・・・?」

疑問系で答える私に、日向は言った。

「そう。君と手を組めば、なんだってできるよ。まず―――。君を無視してきたりした奴を、少しこらしめてやらない?僕と一緒にね。」

そう言った日向は、悪魔のように見えた。
「こらしめる」―――そんな弱い言葉じゃない、恐ろしい言葉に聞こえた。

「・・・どうして?そんなこと、1人でもできるでしょう」

「1人でやったら、すぐに先生に言われて少年の刑務所いきだよ。でも2人なら、恐ろしさは倍。先生に言ったらどんなことになるかだって、分かるはずだよ」

落ち着いた表情で言う日向に、私は寒気がした。
それでも、負けないくらいの強気な態度で私は言った。

「・・・いや。ばっかじゃないの?そんなことしてなんになるのよ。あんたは、苦しむ人の表情が好きなわけ?・・・それに、私はまわりの人のことなんて気にしてないし、もし私が普通の人間で、こんな能力をもつ奴がいたら・・・。みんなと同じようにしてると思う。だからどうでもいいの」

私がそう言うと、日向はおどろいたような表情になった。

「・・・驚いたな。君は、僕の考えに賛成すると思ったんだけど。」

「見かけで判断しないでほしいわ。用はそれだけでしょ?かえるわ」

そう言って、階段をおりようとする私を、何故か日向はとめた。

「・・・でも、その理由は違うと思うな」

「・・・なにがよ」

日向は階段の壁にもたれかかっていった。

「・・・どうでもいいってことはないんでしょ?きっと君は、寂しいはずだよ」

 
   ――――・・・ 寂しい ・・・――――

小さいころから、その言葉には反応してしまう。
その意味は、今の私も昔の私も・・・―――変わらなかった。
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第5話「同じ暗闇」

「なっ・・・・・・・・・!」

目の前の光景に驚く私を、日向は面白そうに見ている。
その微笑は――――。
まるで悪魔だ。

「・・・僕がなんで転校してきたか分かる?」

そう言った日向の顔は、さっきと同じように微笑んでいる。だけど、どこか寂しそうな―――。
悲しそうな微笑みだった。

「―――なんとなく分かるんだ。君も、僕と同じ暗闇を背負っている・・・。」

なんとなく・・・なんとなく分かった。
日向もこの能力で、何かあった。悩んでいるんだ。

「同じような気がしたから、ここへ呼んだんだ。」

そう言うと、日向は炎を消した。

「君のその暗闇の理由を、聞かせてくれるかな・・・?」

日向は少し微笑みながら言った。
その微笑みには、まだ少し寂しい感じがする。

「・・・ご希望どおり。」

私はそう言って、手を動かした。
少しだけ、自分を浮かせるつもりだ。

ふわっ・・・・・・

想像とおり、私は少し浮いた。

「・・・これで分かった?」

「とてもよく。」

そして、私はさっきから気になっていたことを聞いた。

「―――で?何で私をここに呼んだの?・・・さっきの能力を見るためだけじゃないでしょう」

そう言った私と日向の間に、冷たい風がながれた。
第4話「炎つかい」

「日向君、お弁当一緒に食べない?前の学校のこととかきかせてよっ!」

お昼になると、日向の席に女の子たちが集まってきた。
私はいつものように窓をゆっくりとあけると、外を見つめた。

―――そのとき、後ろから思いがけない言葉が聞こえた。

「ごめんね、僕、鈴城さんと食べるんだ」

日向がそう言ったとたん、空気が凍ったような気がした。
私は表情をなるべく変えずにふりむき、日向と女の子たちに向かっていった。

「――私は1人で食べるから。みんなは日向と食べればいい」

これで諦めてくれる――。
そう思ったのに、日向は微笑んで私に言った。

「1人で食べるなんて寂しいでしょ?さっ、屋上いこ!」

そう言って立ち上がり、私の腕をむりやりつかんで屋上へ向かった。
屋上につくと、いきなり腕を離されて、私はしりもちをついた。

「・・・何のつもり?」

私のその言葉は、自分でも驚くほどつめたく、するどい言葉だった。
でも日向はにっこりと笑っていった。

「そんな冷たい目しないでよ。 ・・・ま、それも無理ないけどね。」

そう言って、日向は人差し指をたてた。
その瞬間―――。何故かそのとき、日向が悪魔のように見えた。

ボッ・・・

私は目の前にある光景に、目を見張った。
日向がたてた人差し指から、青くゆらゆらと不気味に光りながら、炎が舞い上がったのだった。
第3話「転校生」

本のページにしおりをはさんだとき、先生が教室に入ってきた。

「今日は転校生を紹介する。入ってきなさい」

そう言うと、1人の男の子が入って来た。
綺麗な黒髪に、きちんと着た制服――――。
ごく普通な子だった。

「日向 槙(ひなた まき)です。よろしくお願いします」

そして一礼。
先生が教室を見回す。あいている席を探しているんだろう。
そして先生が目をとめたのは、私の横の席だった。

「―――ああ、そこがあいている。日向はそこに座りなさい。」

言われたとおり、日向は私の横の席に座った。
そして私の方を向き、にっこりして言った。

「よろしくね、鈴城さん。」

―――――え・・・?


日向は不思議な奴だった。
どうして私の名前を知っているのか。

そして―――。

あの微笑を見たとき、どうして私は寒気がしたのか―――。
第2話「過去」

窓の外を見つめたまま、指を小さく動かした。
その瞬間、先生の机のプリントが散乱する。

この指を動かせば―――。
竜巻を起こすことも、
自分を浮かせることもできる。

だけど・・・。

こんな自分が嫌だった。
他の人間にはない、特別な能力。
こんな能力のせいで・・・。

グーにした手を強くにぎりしめ、
私はそっと目をつむった。



――7年前

「美夜っ・・・・・・・・・!」
私が近づくと、みんなは必ずそう言って、私の前から逃げていく。
理由なんて、7歳だった私にもわかっていた。

みんなの楽しそうに遊ぶ後姿を、私は見ていることしかできなかった。
中に入って、一緒に遊びたい。
でも・・・。あのころ、コントロールできなかった能力。
この能力で友達を傷つけてしまいそうで、怖かった。

年を重ねるにつれ、私の能力は大きくなっていた。
そのことにみんなは気づいている。
だから、私とは関わろうとしない。見えていないように、無視するんだ。
私が化け物だったから―――。


それは14歳になった今でも、変わらない。
先生でさえも、私の力に怖れていた。
たしかに私の力があれば、みんなを傷つけることも簡単だった。

でもそんなこと、できるはずがなかったんだ。
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